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自己肯定感ソングの流行と若者の意識

Chu! 可愛くてごめん 生まれてきちゃってごめん
Chu! あざとくてごめん 気になっちゃうよね?ごめん

『可愛くてごめん』2022年 HoneyWorks

初めてこの曲を耳にしたとき、ひどく衝撃を受けたのを覚えています。
可愛い歌声とは裏腹にパンチのある歌詞。ポップに自分の誕生について謝罪しているではありませんか。

TikTok上ではこの歌をBGMにしたダンス動画やメイク動画が数多く投稿されています。その人気っぷりはとどまることを知らず、配信開始から約3か月後にはK-POP界にも飛び火し、人気の韓国アイドルグループが次々とダンス動画を投稿。2023年3月8日現在でもTikTok Weekly Top 20にランクインし続けています。

また、「HoneyWorks OFFICIAL」のYouTubeチャンネルで公開されたミュージックビデオはは約4880万回再生を記録し(3月9日現在)この盛り上がりはTikTok上だけではないことがうかがえます。

私なりに解釈したミュージックビデオの概要は以下の通りです。

アイドル好きな主人公の女の子は推し活のためにメイドでバイトをしており、努力のおかげで売り上げ1位を獲得。「なぜこの子がトップなの?」と他のメイドからやっかみを受けるが彼女は気にしていない。また、アイドルにお金を注ぐことや自分の服装について他の人からとやかく言われることもあるが、自分の「好き」を貫き通している。

コメントでは「可愛い」「勇気がもらえる」「自信がつく」などポジティブな影響を受けた人が多く見られました。

キュートな声で歌われる、強烈(に感じられるところもある)な歌詞。
なぜみんなが心を揺さぶられ共感しているのか、理由を考察していきます。

かつて、自信がある人は”ナルシシスト”だった

以前は、自分に自信がある人はナルシシストと後ろ指をさされ、「めっちゃ自分のこと好きじゃん(笑)」と揶揄される風潮があったように思います。
ところが今では自分で自分を大切にすることが大事であるという価値観が浸透しつつあり、「セルフラブ」や自己肯定感を向上させることに関心が高まっています。

そもそもナルシシストと自己肯定感が高い人とは別物なのですが、
「自信があること」に対しての認識がここ最近でプラスの意味に捉えられるようになってきたと感じています。

「よく知らない他人」をよく知っている

自己肯定感とは他人と自分とを比べることなくそのままの自分を認めることです。

SNSが発達すればするほど「よく知らない他人」動向までもがわかるようになります。SNSを見なければ知らなかったはずの情報が(良くも悪くも)簡単に手に入るようになったからです。

いつも友達と遊んでいて充実していそうだな】【高そうなごはんを食べられて羨ましいな】【素敵な恋人がいて楽しそうだな】

自分が持っていないものを他の人はたくさん持っているように感じ、孤独感・疎外感が生まれやすくなりました。

また、他者→他者へのネガティブな感情が露骨に見えるようになってしまったのです。例えば過激な書き込み・攻撃など、誰かの妬み・嫉みを目にすることで気分が落ち込むことはないでしょうか?

いつも誰かと繋がっている状態は心地よさばかりではありません。
人の目が過剰に気になり、心が疲弊するときもあるはずです。

だから「(他人よりも)もっと自分に目を向けよう」というムーブメントが高まっているのだろうと考えます。

誰に「可愛くてごめん」と謝っているの?

『可愛くてごめん』には「周りにバカにされようが自分を曲げたくない」「自分が自分の味方でありたい」という趣旨の歌詞が出てきます。

「私らしさを大切に」とはいえ、それを実践するのは簡単なことではありません。SNSがあってもなくても、自分と周りを比べ不甲斐なさや寂しさを感じる時が誰にでもあります。

だからこそ、『可愛くてごめん』の主人公が他人の物差しではなく内なる感情に耳を傾け自分を鼓舞している様に共感するのだと思います。
可憐な女の子が強い言葉で「自分の好きなように好きなことを選択していく」と宣言している姿に勇気がもらえるのではないでしょうか。

多分、”可愛くてごめん”とは、誰かにマウントをとっているわけでも、うぬぼれているわけでもありません。
自身に干渉し傷つけてくるような人たちに対して、自分を守るために心の中で唱えるおまじない的な言葉なのだと推察します。

自己肯定感ソングはこれからも続いていくのか?

他のヒットソングにもこうした流れを見ることができます。
例えば『私は最強』(Ado)『ANTIFRAGILE』(LE SSERAFIM)など、強い心をテーマにした歌詞が多いように感じます。

「自分自身のことを好きでいる人」を憧れの対象として歌詞に落とし込むことで、その曲を聞いたときに「自分もそうなりたい!」「他人を気にせず生きたい!」という気持ちが駆り立てられるのでしょう。

昨今【SNS疲れ】や【デジタルデトックス】が話題となったり、【自己肯定感を高める方法】についてのコンテンツをよく目にするようになりました。

今後私たちの意識がどう変化してくのか・その意識がどのように音楽に影響していくのか、これからも注目していきたいです。

文:シルホド!note編集担当 飯野

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