電車内での過ごし方や気分から、改めて電車とはどんな空間かを考えてみた話。
ここ数年、リモートワークが急速にすすみ、通勤電車に乗る機会が減った人も多いのではないでしょうか。
筆者自身もそんな生活が日常化してきており、かつてより利用頻度は下がりましたが、それでも、週に3日くらいは電車に乗って移動はしています。
実際、電車に乗る人の数も少しずつ戻ってきているようです。
今回は、そんな「電車に乗っている人」を観察してみて、その行動や過ごし方から、改めて電車ってどんな空間なんだろう?ということを考えてみたいと思います。
人の目がある環境だから頑張れる
電車の中を見渡すと、付箋がたくさん貼られた資格関係の本を熱心に読む人や、イヤホンをつけてDuolingoで英語学習している人などを目にします。
時折、現在地を確認するように周りの景色やドアの上の表示板などにも目をやったり、キリのよいところまで読み進められたのか、ふと気をぬいて電車内の広告を見上げたりしながらも、また手元の本やスマホに視線が戻っていく光景は、もはや日常です。
物事に集中したい時、適度に人の目があるほうが没入できたりする気がします。電車の中では、見知らぬ人の目があることによって、いい意味での緊張感が生まれ、目の前のことに取り組もう、という気分が生まれるのかもしれません。件の女の子は、「見て!電車の中でも勉強する私って偉いでしょ!」というような意識もほんの少しありそうですよね。
また、「降りるまで」という時限が決められているからこそ、「それまでにここまでは終わらせてしまおう!」という小さな目標を達成するような気分もあるのかもしれません。
でも熱心に取り組む人たちも、ずっと緊張にさらされていると、ちょっと緩めたくなる時も短いスパンですが、やってくるはずです。
電車に乗っている間、ずっと同じ気分でいることはなく、気持ちは常に揺らぐものではあります。緊張が途切れる時、勉強に戻るか、別のことに気を取られるかは、その人次第です。
いろんな刺激があって、アイデアや気づきが生まれる
観察記録から、「献立どうしようかな」と考えてきたときに、ふと入ってきた情報が刺激になって、アイデアが浮かんだのではないかと推察されます。
電車の中は、多種多様な人がいて、その人たちの様子や持ち物、さらに広告といった情報があふれています。
だからこそ、思いもよらなかったことに気づくこともありますし、「偶然見かけたもの」から発想が生まれ、広がり、次のアクションが変わることもしばしばです。
――あ、あの人のバッグかわいいな、どこのブランドだろう?
――あのカチューシャは夢の国の帰りの人だ。いいなぁ、次いつ行けるかな。
――おなかすいた!この時間のあの広告、飯テロだよー。焼き鳥食べたい。
――あの年配のご婦人のコーディネート、とっても素敵。私もあんな風に年を重ねたいよ。
そんなことを考えながら、電車に乗っていること、ありませんか?
降りる駅まで時間は少しあるし、考えるだけなら、だれの迷惑もかからないので自由にできます。眠ったふりをしたり、周りに関心がないように装いつつも、なんとなく周りを見渡して、いろんな情報をキャッチしている感じがあります。
ネットの情報は「自分が関心を持ったことを調べる」ことが中心であり、おすすめされるのも「自分の関心がありそうなこと」がメインですが、電車の中は、偶然の出会いから、発想や行動が広がる可能性があるところだといえそうです。
なにものでもない「素の自分」になれる
先日、たまたまつけていたテレビで放映されていた某トークバラエティ番組を何気なく見ていた時のことです。
この発言を訊いた時、「あ、仕事終わりの電車の中での気分にすごく似てるかも!」とふと思いました。
一人で電車に乗っている30分は、他人の目はあるけど、たまたまその場に居合わせた人の前では「顔」を作る必要はそこまでありません。なんの役割も定義されていない、なんともいえないふわふわした素の自分になっています。それは自分にとって気持ちを切り替えたり、次の「顔」に備えてチャージしたりすることにつながるのかもしれません。
電車の中での過ごし方はひとそれぞれ
他にも、「前髪を切っている人がいた」、「ベーグルをドア付近で立ったまま食べていた」というような観察記録もありました。本当に電車の中は多種多様な人であふれており、その過ごし方もそれぞれです。
そしてその数だけ、いろんな感情を持つ人が乗り合わせています。
数十分という限られた時間、それぞれの目的地までその場を偶然ともに過ごすことになる電車という空間は、まるでいろんな人が集う公園みたいな存在だなと感じました。
みなさんにとって、電車はどんな空間でしょうか?
ぜひ、教えてください。
このようにシルホド!では、自分自身を含めた生活者の行動や態度を見つめることで、「生活者の気持ち」を理解してい活動を行っています。また、それをもとに心を動かす企画立案もサポートしております。
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文:シルホド!note編集担当 友田