フリマアプリはただのお小遣い稼ぎではない
最近、私のブームはお片付け。整理整頓が苦手な筆者ですが、いろいろな理由があり少しずつ部屋を綺麗にしています。
現在はリモートワークが多く、オンライン会議やじっくりと考える業務が中心のためごちゃごちゃしているとそれだけで気が散ります。整理された空間で落ち着いて仕事に取り組みたい、そしてどうせならInstagramで見かけたおしゃれ部屋のように自分の好きなモノに囲まれて気分を上げたい。。。
と思っていたところで、たまたま始めたフリマアプリ。友達や知り合いから使っている話をちょくちょく聞いましたが、梱包や発送がめんどくさそう…と思っていました。とはいえ部屋も綺麗にしたいし、売れそうな品を捨てるのは勿体ないし、、、ということで重い腰を上げて始めてみることに。
やってみると、手間がかかりそうと思っていた出品は意外とスムーズ。もう使わないモノやなんとなく取ってあったモノがするする売れていきました。売れる売れるとは聞いていましたが本当にこんなに早く売れるんだ!とびっくりしました。そこからフリマアプリの活用も部屋の片づけにも火が付き、片付けがマイブームとなったのです。
経済産業省の調査によるとフリマアプリ市場の市場規模は、2020 年で 1 兆 147 億円、2021 年は 1 兆 2,433 億円 (前年比 22.5%増)と推計されています。この物価上昇時代、不要な物品がお金に代わるのはありがたいことです。しかし市場規模の拡大は本当にそれだけなのでしょうか?
今回は「モノを処分する」場面にフォーカスし、フリマアプリが生活者のどんな「気持ち」に刺さっているのかについて考察します。
フリマアプリと生活者の気持ち
ついに来た、お別れの時
私は過去にコレクションしていたモノがあります。ですがここ数年ですっかりその熱が冷めてしまい手放すことにしました。本当に好きだったモノなのですが、最近それらを見返したり手に取ったりすることもありませんでした。今のわたしにはもう必要ないしここでため込んでいてもしょうがない!と、ついにお別れする決意をしたのです。
コレクションしていたモノがフリマアプリ上でどのくらい取引されているのか見ていたのですがあまり売れていない状況。出品数は多いのですが買い手がほとんどいない様子でした。フリマアプリ以外で売れる方法はないのか調べてみたものの特段なさそうです。そして最終手段、ごみ箱。しょうがないことではありますが、とてもむなしかったのを覚えています。
捨てるむなしさとは何か
コレクションをごみ箱に入れながら、一体このむなしさは何なんだと考えていました。
―せっかくあんなに苦労して集めたのにごみに捨てているようじゃ、何のためにコレクションしていたんだろう― もう愛着はないから処分しているのですが、コレクションしていた時の自分までもが無下にされているような気分です。
当時の自分にとってはそれを集めることに情熱を燃やしていたのです。ごみ箱に突っ込むたびにいろいろな思い出がよみがえってきます。これはあそこで買ったな・これは友達がくれたんだった・そうだ、わざわざあの駅まで行って苦労して入手したよな…と記憶の引き出しが開いて、でも取っておいてもしょうがないんだから!と思い直してまた袋に詰めていきます。
お金や時間がもったいなかったなとまでは思わないし、思いたくないのが正直なところです。人間、年を取るにつれて好きなモノは変わっていくのは当然のこと。でも捨ててしまうということはそのモノをずっと好きでい続けられなかった・大事にできなかったということなのです。これらを買ったことは失敗だったのかもしれないなと後悔の念を抱きそうになりました。
失敗だったとは思いたくない
実は他にもコレクションしていたモノがあるのですが、そちらはちょくちょく買い手がついていました。もちろん購入時の定価よりもかなり低い値段の取引でしたが、なんとなく心が晴れやかでした。
なぜ晴れやかなのかというと、「あの時これが好きだった私」が買い手によって肯定されているような気分になったからです。
不用品をフリマアプリ上で出品して売れるというのは、私にとってはいらないモノでも誰かにとっては価値があるんだと再確認できることだといえます。私の不用品に他人が価値を見出してくれるとことで、コレクションしていた時のあの時間やお金や気持ちは無駄じゃなかったんだと思わせてくれるのです。
もちろん、いらないモノが売れてラッキー!という気持ちがないわけではありません。売上金で新しいモノを購入できるなんて、とても画期的なシステムだな~とありがたみを感じます。ですがフリマアプリでモノを売ることは金銭が得られるだけではないのです。自分の不用品に他人がお金を払ってくれるということが「買い物の失敗という後悔」を和らげてくれる、という価値があるのでしょう。
フリマアプリで購買意識はどう変わっていくのか
フリマアプリの活用方法も出品物も十人十色。今回は「かつてのコレクションを出品するときの気持ち」からフリマアプリの価値を紐解いていきました。
メルカリの「世代別の消費行動と資産認識」に関する調査では、フリマアプリの登場によって、自分が保有する余剰資源を売るという行為が広く普及するようになったとのこと。
今後、フリマアプリがさらに浸透していけばこの傾向も強くなっていくのでしょうか。新しい購買意識が生まれていく過程を、自身の気持ちも振り返りながらウォッチしていければと思います。
このようにシルホド!では、自分自身を含めた生活者の行動や態度を見つめることで、企画の立案からサポートを行っています。生活者を理解し心に刺さる企画にご興味がある方はぜひお問合せください。
文:シルホド!note編集担当 飯野