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「タイパ」と手間の関係性

昨今、「タイパ(=タイム パフォーマンス)」という言葉が話題となっています。
みなさまは日々の生活で、どの程度「タイパ」を意識して行動しているのでしょうか。

考えるきっかけとなったのは、シルホド!での以下のやりとりでした。

最近レコードプレーヤーを購入しました。
レコードを選んでセットする。針を落とす。
少し手間をかけることが逆にいいんだよなと思いつつ、スキンケアの時間や革靴を磨くといった手間をかける時間も自分は好きだったりすることに気が付きました。

シルホド!参加メンバーの「気づきメモ」より

手間がかかることは「悪」ではない

時間を効率的に使うことは、いまや多くの人が求めていることです。
その一方で、わたしたちははたから見れば無駄とも思える時間を、特定の行為にかけていたりもします。

実体験で言えば、コロナ禍で在宅勤務が始まった際、筆者は自分のスイッチを入れるため、仕事前にドリップコーヒーを淹れてから仕事を始めるようになりました。

単に、気持ちのスイッチ=「コーヒーを淹れる行為」というならば、インスタントコーヒーにお湯を注ぐ方が、圧倒的に「タイパ」は良いはずです。
ですが、コロナで外出が憚られた状況下においては、気持ちの切り替え以上に、「コーヒーをじっくり淹れる時間」を味わいたい、その時間は自分に向き合う時間であり、大切にしたいという感情がそこにはあった気がします。

ちなみに、少しずつ外出が日常に戻ってきた最近では、自宅での朝のコーヒー習慣はあっさりとインスタントコーヒーに切り替わりました。コーヒーを丁寧に淹れる時間よりも、一秒でも長く、そこそこ好みの味に仕立てたコーヒー片手に、ソファーに座って心と体を休めることに時間を割くことに喜びを感じています。

その時の置かれた状況や環境によって、それぞれの「時間」の価値が変化していることを、身をもって感じました。

手間≒愛情?その背景にあるものを見るべき

そんな風に考えると、自分の大切なことに時間を割き、手間をかけることは、一種の愛情が表出した行為ともいえるかもしれません。

では「幼稚園グッズを手作りすること」はどうでしょうか。

手間と時間をかけて幼稚園グッズを手作りすることは、子どもへの愛情を示す一つの形ではあります。
その一方で、既製品であっても、子どものために気に入るようなものを悩みながら用意する、時間を割くということもある意味「手間をかける」ことに通じる行為であるといえます。
いずれにせよ、子を想う親の愛情はそこにあるはずです。

手間そのものというより、手間をかけることに付随する「想う時間と深さ」が愛情と比例するといえそうです。
そして、それは「手作り」という形でなくても満たすことができるのではないでしょうか。

そして、「タイパ」は、そのような感情を伴う時間体験が、自分の期待を満たし超えるときに「良い」と評価されるものなのだと思います。

だからこそ、手間をかけて幼稚園グッズを作ることで、その人自身が満足感を得られるのであれば、その人にとっては決して「タイパ」の悪い行為ではないですし、子を想いながら既製品を用意するのもまたしかりといえるでしょう。既製品を手早く買うことで生まれた時間で、子どもと遊ぶ方がよっぽど高い満足感や喜びが感じられることもありえます。
手間や時間の量や長さでなく、そこに存在する「感情」が重要なのです。

「タイパ」を左右するのは気分や感情

音楽を聴くという行為一つをとっても同じことがいえそうです。

休日の時間があるときは、自分の気分にしっくり合う曲を自分で選びたいなと思ったりもします。件のシルホド!メンバーのように、レコードの針を落とす時間も、楽しくいとおしい時間と感じるかもしれません。

しかし、朝、出社前にあわてて身支度しているときはなるべく手間をかけたくない。曲を選ぶ余裕もない!けど音楽で気分は上げたい!この気分にピッタリの音楽を、いつものサブスクリプションサービスの履歴から自動的に選んで流してほしい!というような意識がありそうです。

同じ人でも、時と場合によって、同じ行為であっても向き合い方も感じ方も異なります。手間をかけることに意味や価値がある場合と、まったく意味をなさない場合があるのです。

モノやサービスがあふれる昨今、だからこそ、「今の気分」に合うことを、そのタイミングにふさわしい形で提供されることがとても重要になってきています。

私たちがコミュニケーションを設計する際も、そんな生活者の気分の変化をしっかりととらえていきたいものだと、改めて感じました。

文:シルホド!note編集担当 友田


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